Wednesday, March 17, 2010

ネルダ (パリ便り)

カタールにいたときは、フィリピン人の住み込みのお手伝いさんを雇っていた。彼女の名前はネルダ。50歳ちょっとだなんて信じられない元気さと、マザー・テレサのようなやさしい目を持った人であった。フィリピン人は色んな顔のタイプがあって、所謂南方系ポリネシアン風、中国(日本)風、インド風といった感じである。ネルダはこの、インド風だった。

先日バスに乗ると、ネルダ似の、すなわちインド人寄りのフィリピン人女性がいた。すると彼女はまるで顔見知りのように私に話しかけてくる。こんなところもネルダそっくり。フィリピンでは年上の女性は「姉御」扱いされ、頼られることが多いようで、その分、姉御達は自分より若い人に気軽に声を掛ける。我がネルダは、我がカタール時代の集合レジデンス、グリーン・ビレッジ(緑なんて殆どなかった)のお手伝いさん達の最年長であった。一週間もしないうちにグリーンビレッジの100戸に住む、すべてお手伝いさんとお友達になっていた。子猿たちを連れて4人でレジデンス内を散歩していると、皆に「風邪治ったの?」「ほら、さぼってんじゃないよ」と声を掛け、その度に私に「あの子はこれこういう事情の子で」「あいつは愚痴ばっかりで仕事がいい加減で」と色々教えてくれたものだ。

Alors, パリではしょっちゅうフィリピン人に「Are you Japanese?」と話しかけられる。取り立てて何か質問があるわけではない。多分、言葉も通じない国で、階級意識も残る国で、お手伝いさんとして仕く毎日、同じアジア人の女性というだけで親近感が沸き、話しかけてくるのだろう。フィリピン人というのは人懐っこくコミュニケーション好きの国民だと思う。そんな人にパリは住みづらいだろうな。

さて、バスの中。子猿が、「ママの友達なの?」と聞いてくる。「知らない人と口利くのはいけないこと」といつも言われているから、母猿が見も知らぬ人と会話が始めたことを怪訝に思っているようだ。夫は機転を聞かせ「ネルダの友達なんだって」と答えてくれる。やはり彼もネルダに似ていると思ったようだ。

あぁ、ネルダ。三年間、家族の一員であった。子猿に愛情を注いでくれて、私の良きパートナーになってくれて、彼女との生活を思い出す度、有難い気持ちで一杯になる。
子供達の写真を現像して、フィリピンに送るぞ、と決意する今朝なのである。

1 comment:

  1. 3年間生活を共に、となると充分家族の一員ですね!子どもの成長した写真、、絶対喜んでもらえると思います。
    ところで、日本人の顔も、よ~くみると南方系、北東アジア系、、、さまざまに思えます。

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