Tuesday, June 30, 2009

地獄からの訪問者

今週末から地獄からの訪問者が我が家に泊まっている。金曜日の真夜中過ぎに到着した一家は幼い女の子二人を同伴しており、地球の反対側からきたため、当然のことながら時差ボケ激しく、18ヶ月の娘は一晩中泣き通した。日中もこの娘は、母親にべったりで、少しでも母親が見えないとパニックに陥り泣きわめく。上の娘は、可愛く微笑むが良くみると、黒髪に混じって白いものがたくさん。あわてて確かめると、親しらみに混じってしらみの卵がどっさり。こうなると、特別のシャンプーを買いにはしり、彼らにあてがった息子の部屋のものは全部洗濯機に放り込み、30人余りのパーティーを切り盛りしたあと、2時間娘さんの髪の毛を特別な櫛でとかして、しつこくくっつくしらみの卵を取り除く。こんなに親身にしてあげているのに、母親は、我が家の愛犬チャーリーにしらみを移されたのではないかと、のたまう。さすがにこれには堪忍袋の緒が切れた。「こんなにびっちり卵がくっついているのは、数週間しらみが大活躍した結果にちがいない。」と言い放ってワインを一気飲みした。その後、犬は人間のしらみとは無縁であることをインターネットで確認した彼女は、チャーリーに陳謝したが、覆水盆に返らずである。おまけに彼女は、片付けが苦手のようで、見る見るうちに家の中が散らかっていく。お料理も不得意を自負するだけあって、圧力鍋を丸こげ状態にし、食卓はもっぱら私の担当。寝不足と苛立ちに耐え切れず、ワイングラスを持って夕食後はそそくさと寝室に引き上げてみたりした。駆け込み寺ってこんな感じかなあ、と思ったりする。

Monday, June 29, 2009

宝石について

カタールにはスークと呼ばれる市場がある。
趣はない。今現在は古ぼけた雑居ビルに店舗が一杯集まっているだけなのだ。首長が観光誘致のため、アリババ風の古式ゆかしいスークを建てていて、いずれそちらに移転予定だ。もし、いつか皆さんがカタールに訪れることがあったら、その頃には空調付きのアリババスークになっているはずだ。

さて、このスークにはガラクタ、鷹狩り用の鷹、絨毯(多くは中国製)など、色々売っている。
その中でも女性の心を高鳴らせるのが宝石スーク。
湾岸で取れる真珠からスリランカ産のサファイア、ルビー、もちろんダイヤもある。幅広い質のものがあるので自分の予算、好みに合ったものを選べるのだ。

小生はあまり宝石に興味がない。持つ環境に育っていなかったし、キラキラってタイプではないのだ。一方、夫は若い頃から石好きで博識である。彼はInclusion(気泡?マダム・バタフライ殿、合っていますか)が入っていても、自分が気に入った色、輝き、大きさで選ぶ。「Inclusionによってはそれが個性になるし」という。一般的には割れ易くなるし、価値は低いと言うが、お構いなしである。

宝石の長所は丈夫、永久であることなのに、私の宝石は大切にしないと終わりがきてしまう。でも、そういうところが人間らしくって気に入っている。

Sunday, June 28, 2009

Dear Friends

来週いよいよカタールを去ることになった。

悲しいかな、出会いがあれば別れがある。沢山の素敵な人々に出会えて本当に良かった。
一方、ドバイ同様、西洋化に張り切っていて拝金主義なところが目に付くこの頃、文化的な刺激はあまりない国だった。それでも治安の心配もなく、快適な三年間を過ごすことができ、感謝カタールである。

残念だったのは、この三年間、仕事を見つけることができなかったことである。三十件はあたっただろうか。英語圏だし、超好景気、新興中だし、イケルだろう、と思っていたのに・・・。中途半端な経歴がダメなのだろうか、歳がいけなかったのだろうか、縁がなかっただけなのだろうか。

悔やんでも仕方ない。その反面、そのお陰で、贅沢な時間を過ごすこともできた。
この三年で小説を書いてみたのだ。内容は、アラフォーなスチュワーデス物語。7人のキャビンアテンダントの心のJourneyを、頑張る女性へのオマージュを込め、オムニバス形式で書いてみた。
Ebookの Youtubeと呼ばれている、 Scribd.comにアップロードしたので、もし良かったら見てみてください。10ページ強の短編×7章ですのでお気軽にどうぞ。

タイトルは「親愛なる女性達へ ~新・スチュワーデス物語」
リンクは↓
http://www.scribd.com/doc/16891500/ (これは13ページ)

書き出すと止まらなく、こうして終ってみると心の中に7人の友達ができたように感じる。

よって、カタールでの出会いは実際にできた友人ら + セブン、である。

Wednesday, June 24, 2009

世界一怠け者の犬

我が家のチャーリーは、村一番の怠け者な犬の定評がある。日中は、革張りの安楽椅子に座り、あごを肘掛にのせて居眠りをし、ご飯を食べるときは、腹ばいになってパクパクたべ、べろべろ水を飲む。散歩も日中はあまり積極的に好まず、丘のふもとの図書館に娘に連れられて行くと、途中で根をあげてぺたりと路上に座り込む。車も犬をよけて迂回をする。幼いころラッシーのような犬を夢見た私は、チャーリーをかわいいと思うが、子供たちは手間のかかる弟のように扱う。
ところが、チャーリーは、そんなことにはお構いなしである。子供たちを自分の子羊と確信し、誰かが悲鳴でもあげようものなら、吠えて警報をならし、夜中も一人一人見てまわり、夜明けには安心して、私の寝室の前に丸くなって寝る。朝、扉をあけると、ヨガでいうDowndogの見本よろしくお辞儀をしては抱擁を歓迎する。決まって二回くしゃみをし、プルプルと体を振って階段を下りてついてくる。子供たちは大きくなり、母にあまり興味を持たない中、チャーリーだけは家の中をついてまわり、仕事から戻ると、全速力で走りよってきては飛びついてくる。大きい犬だけあって迫力がある。世間の評判とは裏腹に、とても勤勉で忠実な犬だと思う。

言葉の壁

来月、三年ぶりにパリに戻ることになった。

友人らには羨ましがられるが、豚に真珠、怠け象にパリ、本人はそんなでもない。
再びフランス語でまくし立てる人々の中、和まなくてはならないかと思うと気が重かったりもする。
前回住んでいたときも失敗したこと数知れず。伯母でとてもエレガントな方に、「是非今度うちでディナーでも」と誘ってくださっているのを聞き違え、不躾にも「いえ、結構です」と断ってしまったり、私は拙い仏語でアフリカのサファリの話をしていたのに「あそこの庭園は薔薇がきれいなのよね」と合いの手を入れられ、あぁ、やはり伝わっていなかったか、とか、そんなトンチンカンばかりだ。

でも外国に行くとはそういうことなんでしょう。言葉の壁があるのは当たり前なのだ。

昔、ロンドンで、「折角だから最新の映画を観よう」と友人に誘われ、リチャード・ギアが南部なまりで話す、というハイレベルな映画に入った。リチャード・ギアはモゴモゴで聞き取れない。私は想像力を駆使して話を追ったが、友人は確か英語が苦手だったはず・・・。
が、映画が終ると、「良かったねぇ!」と目を潤ませ感動している。良かった、話についていけたようだ。しかし!後でお茶を挟んで映画のデブリをすると、「ねぇ、何であの時彼は逃げたの?」「あの男は誰だったの?」「なんで処刑されたの?」と、彼女は立て続けに聞いてくる。全然わかってないじゃん!どうして感動できたの???

別の友人は英語力をブラッシュアップしようと、シドニー・シェルダンのペイパーバックにチャレンジ。
「結構快調に二十ページ程読めたから、一応確認しようと翻訳本で照らし合わせたら知らない人が五人も死んでいることになっていた。もう英語はあきらめようと思う」
と言った。その彼女、今は立派に海外に住み現地で働いているらしい。

井上靖の「おろしや夢何とか」という、ロシアに流れ着いた日本の商船の話を読まれた方はいるだろうか。鎖国時代の話だ。文化、風習、気候が全く異なる土地で、船長は肉を食べることを拒否する船員に「生き延びたいなら食え」と言い、ロシア語を学び、勇敢に、ひた向きに現地に順応しようとする。その姿に「私も頑張る!」と大げさに思ったものだ。

ちなみにこの本は「Reves de Russie(ロシアの夢)」という名でフランスにて出版されている。その他にも沢山、尊敬する井上靖の作品が仏訳されている。谷崎、三島、漱石は言うまでもない。「結構、気が合うじゃない、フランスったら!」と思う瞬間である。

Monday, June 15, 2009

ミュール

今週末、橋向かいのバークレーで、靴を作るワークショップに参加した。ロンドンから来た靴の先生のメリッサと、生徒7人の工房で、簡単なミュールを作った。簡単といっても、初めて靴を作る人にとっては、16時間に渡る作業はちゃんと注意していないと工程が一つ抜けたりするので油断できない。生徒たちの大半はファッション系の学校をでて、ファッション系の会社で働いているが、中には弁護士兼ヨガの先生のゲイの男性や、元声優で、今はバッグのデザインと製造をしているゲイの女性もいて、面白かった。生徒はほぼ全員が靴のデザインや製造に携わることを考えている若者たちで、本当に自分に向いているのか試してみようという趣旨らしい。その中で、いかに楽してかわいい靴を作れるか考えているのは、私くらいだろう。おかげで、2日間かけて作ったミュールは、無垢で朗らかで、「おお、かわいい。」と思わず言ってみたくなるデキバエである。でも、久しぶりに16時間みっちりマジメに作業をしたので、今日は仕事にならないほど疲弊している。

http://www.prescottandmackay.co.uk/courses/shoemaking/two-day-introduction-course

Tuesday, June 9, 2009

靴屋

以前、夢の職業について書いた。ついに、一年発起をした。今週末は、靴を作るワークショップに行く事にした。一度だけ行った占い師は、占い師暦30年だけど、転職とは思わず、ある日押入れの整理をしてかわいいブローチを見つけ、これを靴につけたら素敵だろうと思い、靴を作るワークショップに行ったらしい。そして作った靴がハリウッド映画に取り上げられ、今では靴のデザイナーとして活躍している。私もそんな転身を夢見て靴を作るワークショップに行くことにした。同僚にその話をすると、割安で靴の修理を頼むね、とか、金融で食べていけなくなったときの手に職だよね、とかとても限界的な反応がくる。

ピアニスト

先日我が家に元プロのピアニストが来た。ピアニストはピアノ以外に何一つ学ばない人なのかと思うくらい原始的なホモホモサピエンスだった。奥さんが旅に出たので、娘さん二人を連れてやってきた。通常ならば、こういう原始的なホモホモサピエンスを忌み嫌う夫が、「晩餐を一緒に楽しむことにした。」と断言するので、夫唱婦随を気取り、晩餐に及んだ。まずは、鳥を丸ごと焼いたので切って取り分けてくれるかと頼んでみた。すると、「僕は刃物を持たない主義だ。」という。指に万が一のことがあってはいけないということらしい。晩餐が進むと、「貴方は、若いころ何を学んだのか?」と、問いかけてくる。ワインを口に運ぶ手を宙に浮かせ、キッとにらみをきかせる母を見てあせる子供らは、"Mother, you are still very young, of course."と、なだめてくれた。冷や汗をかくピアニストは、お皿に盛られたディナーを野獣のようにむさぼり、陳謝する。娘さん二人も野獣のように食べる。きく所によれば、お母さんが旅に出て以来、まともな食事を食べる機会がなく、父が何も作らないので10歳にもならない娘がご飯を作るらしい。世を嘆き、ワインを懇願する母に、わが子たちは慈悲深くワインを注いでくれた。おかげで翌日はひどい二日酔いだった。

頭の体操

2年前のお正月に、儲かって儲かって仕方ない、という素晴らしい初夢をみた。以来、幻の儲かる事業の探求をしている。脳みそも筋肉かも知れないと最近思う。考えれば考えるほど新商売・珍商売のアイデアがわいてくる。問題はこのアイデアたちを実践に移せるかどうかである。いざ始めようと思うと、いろんな障害が思いつく。防衛反応がフル起動する。この防衛反応を克服できるかが凡人と非凡の分岐点のような気がしてきた

Wednesday, June 3, 2009

卒業式

今日は4歳になる息子の保育園の卒園式だ。アメリカの大学をまね、正方形の帽子を被ってマントを羽織るらしい。

私は転校生だったり、何かの事情で入学式、卒業式をあまり経験していない。当時は「面倒が少なくって良い」と思っていたが、大人になると初め終わりのけじめなく終ってしまった学生時代の思い出という感ありで、せめて子供のは張り切って行くぞ、と思っている。

ところが、この夏戻る予定のフランスは入学式、卒業式はないという。何となく始まり、三々五々に散って終るらしい。私と夫はフランスにあるビジネス・スクールに行ったが、ここの卒業式は盛大であった。唯、これは国際的機関だから扱いがちがったということなのか。
この卒業式、フランス人の夫は初めての華々しい終わりに感動もひとしおだった。式に参列してくれたソルボンヌを卒業した日本の友人も「私のと全然ちがう、すごーい!」と羨ましがってくれた。彼女は卒業証書を事務所の窓口で受け取って終わりだったという。

終わり、別れも大切にしたい、と思うのも年のせいであろうか。