Tuesday, March 29, 2011

発見

発見
今年の春は例年になく寒い年で数日前まで真冬のようであったが、ようやく昨日、東京で桜の開花宣言があった。麻布まで用事があり、大抵は地下鉄で移動するのだが、今日は天気もいいし桜が何分咲きなのかも見たかったから珍しく車で出かけた。途中、地震で天井が落ちた九段会館を通り、生まれて初めて坦々麺を食べた赤坂飯店が入っている毎日新聞社、友達が働いている住商、JICA、丸紅、改装中のパレスホテル、昔取引先だった銀行や証券会社、日比谷公園、自分が働いていたビル、皇居のお堀沿いの咲きかけの桜などを見ながら、見かける景色や建物の殆ど全てに思い出があることに気がつき、何とも言えない安堵感を感じた。この3週間テレビやメディアで壊滅状態の映像と、一進一退を続ける原発の映像ばかりを見続けたせいあろうか、こんな気持ちになるのは。。済んだ青空に皇居のお堀も石垣も美しく、皇居前広場の松の木々の見事に創られた曲線、二重橋など、どれも見慣れた光景なのに、今日もそこに存在していることに安心するのである。とても不思議なのだが、地震が起きてから、こういう「発見」が続いている。友達との再会、見慣れた風景、きびきび働く人々、店頭に戻ってきたさまざまな商品、全ては当然のようにあったものが、再び、またあることに感激し、かけがえの無い物と思えるのである。瞬間にして多すぎるものを失い、深い悲しみと不安や恐怖の最中にいる沢山の被災地に人達が、一日も早く、身体の中から再出発を始める力が湧いてくる日が来ればいいと思う。彼らの苦しみを想像することしかできないけれど、誰にとっても日常ほど有りがたいものは無いに違いない。

2 comments:

  1. そらさん、読んでいるとその情景が思い浮かびます。私は日比谷・銀座界隈にはそんなに思い出がないのですが、まるでそらさんと同じ日々を送ったかのように愛着もってその場所場所を思い浮かべています。

    私は神戸の時、日帰り便の乗務をしていました。成田に向かう帰り便は夜間飛行で、神戸付近の上空を飛んでいたとき、窓から下を見下ろすとまだ火が燃え上がっていました。気づくと隣に先輩CAがいらして、「私の思い出が燃えている」と呆然とした面持ちで涙を流していました。

    こちらでニュースを読んでいると、まるで母国を亡くしつつあるような気持ちになります。母なる国、と思うほど愛着を持っていたなんて、今まで思いもしませんでした。

    エコノミスト誌によると、これで10年出遅れるって予測が立っているようです。遅れてもいいからこの困難な状況を生き抜けて欲しいです。

    ReplyDelete
  2. ほんとsoraさんの車窓から映像が見えるようです。今回の震災で、当たり前のことなど何もないことに気づかされました。ひとつひとつのことが本当に奇跡的なバランスの上にあって、愛おしいものであること私も再確認しています。安全に空気が吸えていることさえありがたいです。

    ReplyDelete