Monday, February 21, 2011

本屋大賞その2、「サウスバウンド」by奥田英明

スキー先で読んだ本、「サウスバウンド」は、2006年度の本屋大賞を受賞した、という帯を見て借りたのですが、今、ウィキで見ると、直木賞も受賞していたのですね。今の時代、文学賞ってどれくらい反応があるものなのでしょう。文学的でない私、本屋大賞→直木賞→芥川賞の順位で興味度が落ちて行きます。

と、最初から脱線しましたが、このサウスバウンド、面白かったです!But白銀のスイスで読むのに、これほどふさわしくない本はなかったとも思う。
というのも、本の舞台は後半は沖縄の西表島。
真っ青な海やピンクのさんご礁を思い浮かべても、外は凍てつく雪一色。美味しそうな豚の角煮に炊き立てのご飯のページを読み終え、こてこてのチーズフォンデュの準備をする。雪山と沖縄ならやっぱり沖縄に軍配があがりますね。

普通、少年がナレーターの小説を読むと、白々しくって読んでられないのですが、奥田さんは巧い。ご自分が少年心をもってらっしゃるのでしょう。12歳の少年の、無垢な部分と、現実的な視点が入り混じっているのに、うんうん、自分もそうだったかも、って思い出しながら読みました。元過激派のお父さんはちょっとやりすぎ。ま、君もこんな父親を持って大変だろうけど、若いときにいろいろなキャラクターに接したほうが、人生厚みがでるよ、なんて、たかが本の主人公なのに、実在の少年に語りかけるかのように、心の中でつぶやく自分がいました。

同時平行で読んだのが、子供の本の森へという、心理療法のエキスパート、河合隼雄と詩人の長田弘の対話集。これもとてもよかった!ほとんどが私が知らない、忘れちゃった児童書、絵本についての彼らの意見交換なのですが、それを通して、彼らが子供たちに対してどのように思っているか、どんなメッセージを送りたいのか、伝わってくる。
多くのメッセージは、「子供を守ろうとしているけれど、呪縛にかけていることが多い。解き放ってあげなくてはならない。」ということ。大いに同感なのですが、現実的には、心配でついつい過干渉になりそう。

そんなある日のスキー。
45度の斜面を上がったり降りたりした後のご褒美は、下山するとき。
緩やかな雪の回廊をただただ重力に任せて滑り降りるのです。ところが、ワタクシ、ちょっと道を間違ってしまったようで、いつもとは違う回廊を滑り始めました。でも、もう引き返せない。私の姿を見かけた義父は「Ohlala、あのコ、イタリアにでも行く気かい」とつぶやいたとか。
私は慌ててもしょうがない、といつになく、余裕をもって滑り続けます。なんていっても、その雄大な景色が美しくって。
というのも、いつもの回廊はもみの木がセーフガードになっていたり、カーブするところには、オレンジの網があって、落下防止するようになっているのですが、このイタリア行き(?)の回廊は視界をさえぎるもの、何にもなし。爽快なこと!
時折、背後からビュン!とスノーボーダーが追い抜いて、そのままジェームス・ボンドよろしく、崖からジャンプしたり、そのくらい、何にもないのです。

そのとき思ったのが、上の二冊の本でした。
確かに。
子供に健常に、勇敢に人生を楽しんでもらいたいなら、セーフガードを外す勇気も必要かもね。そして私も然り。

また長くなりました。
サウスバウンドはライト・ノベルでもあるので、疲れたときなどにお勧めです!

2 comments:

  1. 子供を呪縛するのでなく、解き放つ。すごく良い言葉ですね。夫にも言える気がします。こうなったらいいとか、自分の尺度でつい意見を押しつけてしまいそうになります。夫の強さを信じて相手を尊重しなければ。。。
    セーフガードのない斜面、緩やかに滑る、やっぱりスキーは楽しいかも。

    ReplyDelete
  2. それ、わかります!

    昔、直属ではなかったのですが、日本人上司とロンドンの現地スタッフについて軽口を交わしているときに、彼曰く、「でも、最近は悟った。彼らには彼らの『持ち味』があるんだから、って自分に言い聞かせるようにしたら、あまりムカッとこなくなった。」って。

    私も夫に、「あぁ、じれったい」とか、「もっと押せばいいのに」と思うことありますが、そういう時は、「彼の持ち味だし、それをひっくるめて好きになったんだから」、って、耳を餃子に、目にはアイマスクして、こらえるようにしています。

    日本はスキー場が不人気で閉鎖というニュースを聞きました。ってことは空いているのかな?あとは、ゲレンデで音楽流すのやめてくれたら、日本のスキー場も素敵ですよね。

    ReplyDelete