Saturday, April 17, 2010

「魂萌え」桐野夏生を読んで

「魂萌え」という本を読んでみた。桐野夏生という現代作家の本である。自分の好みかどうか微妙だけど、ま、確かに面白かった。

話の内容は、還暦前の日本人のとある主婦が、自我に目覚めていく過程とでも言うのか、イプセンの「人形の家」の現代日本版というか。老いを恐れる気持ちや、自信のなさと戦うつらさが巧く表現されていて、近未来の自分はこうなるのだろうか、とやや不安になるほどリアルな語り口であった。

恐れながらも外へ踏み出していく主人公、爽やかという言葉が似合わない主人公なのだけど、そこがまた日本っぽくって。海外にいると、日本を美化して思い出す傾向があるけれど、梅雨の終わりに帰省することになっているし、それに備えてこういう、日本のジメジメーッとしていて、ねじれているところを思い出させてもらえたのは良かった。心構えができているとがっかりしないで済みますからね。

初めて読む作家だったけど、他の作品も読んでみようかと思う。

2 comments:

  1. 美化、私もしてます。
    世の果てみたいな当地で、長い冬の間、ネットもなく閉じ込められた初期の頃は特にそうでしたが、日本はお隣さんみたいなパリに住んでいてもそうですか。
    美化って、究明してみれば、私の場合、己の環境、状況への不満のはけ口だったかもしれません。
    実際には平凡だった過去を理想化して、自分に言い聞かせていたのだと思います。
    日本で感じたこと、このブログで聞かせてくださいね。

    このコメント昨日発信したのですが、届いてなく、再トライです。

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  2. エスプリ・ココンさん、コメント有難うございます。

    美化、します!パリにいても、それとも尚更。パリ人たちのサービス精神ゼロの、謙虚さゼロの態度にガク-ンと落ち込むたびに、「あぁ、日本」って。

    前回の日本帰省で適当に入った美容院が、今風のところだったらしく、今風の美容師さんに、「髪がヒドい状態ですね」と言われ、でもそれをケアしてくれるわけでもなく、とてもぞんざいに扱われた際は、あまりのショックに世界の終わりを感じたりしてました。

    そして、今回は我が青春の湘南・鎌倉方面に滞在する予定なので、それがどの位イメージと異なるのか、どきどきです。その際はルポルタージュさせていただきます。

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