Saturday, October 9, 2010

フランスの教育システム by Peter Gumbel

昨夜は、7区にあるアメリカン大学(American University in Paris)に出かけ、ピーター・ガンべルというジャーナリストの講演を聴いてきました。彼は、「On achève bien les écoliers (子供にとどめを刺す教育とは、ということか、と)」という著作で今話題の人です。

本は読んでいませんが、大体の内容は、フランスの教育システムは、子供の自尊心を傷つけ、臆病な性格を形成している、というもの。ガンべル氏は第一線のジャーナリストとしてフランス文化に精通しており、一流大学で講師として教鞭をとったこともある人です。
教室で、優秀なのに、意見を求めても何もいえない生徒達を見て、何かがおかしい、と思ったことから、調べていくちに、フランスの教育システムの穴ぼこだらけなことに気づいた。教師は教えるということに関してトレーニングもされていない、そもそも、教師の役目は、自分の知識を生徒に伝授すること、と定義づけられていて、学校として、クラスとしての一体感を創り上げる、生徒の個性を伸ばす、成長を助けるなどといったことは、教師の、学校の仕事ではないとされている。80%強の中学生(コレージュ)が学校は楽しい場所ではない、と感じている。体育は最近まで授業になかった、それよりも数学至上主義で、詰め込む、プレッシャーを掛ける、常に隣のクラスメートと比較して、競争心をあおる、自信喪失させるようなことを言う、エトセトラ、エトセトラ。

長所としては、公立校はタダであること、またカリキュラムの水準が高いこと。この二つだそうです。

日本の教育現場も大変なことになっているようですが、フランスもテコ入れ時のようですね。いじめ・自殺の話ばかりの日本も嫌だけど、フランスで過ごす思春期もかなり最悪っぽい。
夏に再会したJubiさんのところのティーン・エイジャーらは、のびのびと「青春を謳歌」していて美しかった。やはり教育はアメリカが良いのでしょうか。ガンベル氏は以前はロスアンジェルスに住んでいたが、あそこの教育は素晴らしかった、めちゃめちゃ高かったけれど、と言っていました。

さて、怠け象レベルでの洞察・感想は・・・
・確かにフランスの先生はドライな人が多い。割り切って仕事しています、言われたことはやってます、公平にやってますので愛情は期待しないでください、感じで。人との距離感が掴めない人懐っこいタイプのコは、先生に疎まれることが多いように感じられます。
・何か問題があると、学校側はすぐにカウンセラーや心理学者を紹介するが、これは教師の責任転嫁のケースが多いのでは。
・中学、高校が楽しい場所でない、なんて青春時代の喜びの半分をむしりとられているようなものでは。タダでさえ、青春は残酷なものなのに。フランスでは、躁うつ病になる子供が多いわけだ。

そして、日仏比較というところでは、
・フランスでは学校の掃除を生徒にさせないようだがこれは残念だなぁ。あれはコスト削減にもなるし、良い教育なのに。
・あと、日本は儀式好きというか、入学式、始業式、終業式、卒業式と色々あるけれど、あれもけじめにもなるし、いい想い出にもなるし、フランスも取り入れたらいいのに。
・そして、日本の学校は親に求めるものが多い(かばん、お弁当、PTA、運動会、学芸会、などなど)というのを聞きますが、フランスももっとそうすればいいのに、と思います。自分で自分の首をしめているかもしれませんが・・・。教育って、学校と家と環境の三者がシームレスにタイアップしてするものではないでしょうかね。

ともかく、頑張ってね子供達!

4 comments:

  1. アメリカの教育は、公立で言うと地域でまちまちである。我が家の子供らは親の参加が求められる公立の学校だが、私は子供の担任の先生の名前を覚えるのが精一杯。それでも、学校ではちゃんと覚えていてくれて、末っ子が中学に入った今年は、これでXX家は4人だねとか、またXXがきたよとか、先生やスタッフが歓迎してくれる。一ヶ月遅れで通知を提出すると、学校から連絡が入り、一応説教しておいたよと教えてくれる。地元の図書館でもXXの子供はちゃんと知っていて、さっき帰ったよとか、電話をくれる。ほのぼの村に育つ子供はほのぼのする。

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  2. 私もフランスの教育に対する姿勢にはずっと疑問を感じています。
    子供の時からどうやって論理的に相手を言い負かすかということを叩きこんでいる分、正統性のある意見かという自問自答をする前に自分の意見を正当化させる為の論理に何の意味があるのでしょうか。結局自己満足の為だけに過ぎません。
    私はフランスの学校へ娘を行かせてみて、どんどん自信を失っていき、割りきった仕事しかしようとしない先生の態度を見て、こういう学校に行っていたらそいう子供に育ってしまうと思い、学校を変えました。家庭それぞれと思いますが、若さあふれる子供のエネルギーを抑え込むだけ(しかもそれは先生の負担軽減の為であって子供にとって良いといった視点ではない)の教育では、何か大切なものを失う気がして寂しい気持ちになります。

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  3. なるほど、そうやってエリート・フランス人のいやみたらたらが誕生するんですね。日本のエリート官僚のカリカチャーをみるようです。

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  4. Mihoさんの「(先生の)負担軽減」というのが、フランスの教育・子育ての実体だと思いました。

    働く母親支援ということで、保育園から子供を預けられるようになっている。これは親の負担軽減になっているのでしょう。では学校は、というと、やはりMihoさんの言うとおり、先生も省エネな教育をしていて・・・。負担軽減が文字通りに取れない、「手抜き」に感じてしまう、何故だろう。

    Jubiさんの、英国少年素晴らしいけれど、感動するけれど、寒中水泳でなくてはいけないの?プールでいいじゃない、と老婆心が出てしまいます。

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