Thursday, September 30, 2010
ベトナム麺、ガーブン
ベトナム料理屋、中華アジア屋に行くと必ずメニューに探すのが、この麺もの。良くあるのは、ボーブン・パット、この言葉を分解すると、「ボー」が牛肉、ブンは不明、「パット」というのが、フランス語で麺の意味。豚肉だとホエブン・パット、鶏肉だとガーブン・パットとなる。何回もチャレンジしたけど、どこもこの店のガーブンにはかなわない。
この店、初めて行った時からもう十年近く経つ。・・・そう書きながら、時の経つのの速さに胸が詰まされる。昨日のことのようなのに。
この店、といっても実は名前も覚えていない。Courcell駅の近くにある、どこにでもあるような地味~なアジア屋なのだ。中華風カレーもあれば、ベトナムもある、タイ風サテーもある、そんな主義主張がない店。おばちゃんは北京語を話す。忙しいときに、水など頼むと目線を合わせないようにして聞こえない振りする、そんな、パリにはよくいるおばちゃん、よくあるアジア屋。
この近くには日本大使館もあるし、日本企業も何社かあるよう。近所の日本人にとって、ここはちょっとした社食の代わりとなっているみたい。もちろんフランス人も沢山。日本人の食べているのを覗くと、大抵ガーブンを選んでいるから、私たちの口に合う味付けなのかな。
さてMちゃん。彼女は「あのさ」、とさばさばと話す、性格もさばさばっとした、実にカッコいい女性(ひと)。でも、一方で九州出身の女性に共通する、南の太陽よりも暖かい優しさも持っているのを知っている。
十年近く前に、当時不案内な新地パリで職探していた私に、友人の友人であるMちゃんは、何か手伝えることがないか、と短いランチの時間を割いて相談に乗ってくれるべく、この店に連れてきてくれたのだった。これがMちゃんとの付き合いの始まり。そしてこのガーブンとも。
あの時も出だしっからMちゃん節で、
「ここね、このガーブン以外は美味しくないから、これ注文するよ。牛も豚もあるけど、鶏肉のが美味しいから、それでいい?飲み物はキャラフドー(水道水、これはタダ)?」
とタッタと頼んでくれて、早速モノが来ると、
「これに、この甘酢をかけるんだけど、おばちゃん、気が利かないな、一つじゃ足りないっていつも言っているのに」
とおばちゃんを呼んで、小皿でくる甘酢ももう二皿要求し、
「そして、この唐辛子ペーストを多目に掛けて、しっかり混ぜる」
・・・私はただただ真似を。
お・い・し・い!!! もう、これを食べているときを表現するには、ガッガッと頬ばる、というしかない。いつも一気に食べ尽くしちゃう。
写真を説明すると、ビーフンをゆでた(温)のに、レタスの千切り、ミント、コリアンダー(野菜類は冷)、ベトナム揚げ春巻きのぶつ切り(温)、鶏肉の炒めたの(温)、ニンジンの千切り、砕いたピーナッツ、この温・冷混ざったのをMちゃん式に食べる。
ここには、今まで何回来たことか。
ある時は、結婚前の夫をMちゃんに紹介しに、そして後には長男を抱っこ紐でおなかに巻きつけて来て、そのままの姿でガーブンをすすったり、更にそのあとには、寝ている次男をプセットに入れたのをテーブルに横付けして食べたこともある。おばちゃんは子供の姿を見るたびに、その成長を喜んでくれ、自分も孫が出来た、と同じ話を繰り返した。Mちゃんは、そんなとき、「はいはい、無駄話はそれ位にして。それよりガーブン!」とそっけなく、それがまた可笑しくって・・・。
時は経ち、そんな赤ん坊だった子猿らが、二人とも幼稚園に入ったので、私はまた気軽な一人者となって出かけた。すると、おばちゃん、過去の対応と異なり、見事に無関心な態度!10年来の客でも、子連れでないとこうも冷たいのか。この白黒はっきりしているのが可笑しい!!
ちょっとした私の十年史が、このアジア屋のおばちゃんに記録されている、と甘えたことを思ってはいけない。多分移民だものね、おばちゃんの人生全部覚えていたらつぶされるくらい色んなことがあったのだろう。このおばちゃんの中では、人は流水のごとく、右から来て、左へと消える。
あぁ、なんだか小気味良いわ、そういうのも。
この麺、ご家庭でも真似事はできます。お勧めですよ~。
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