Tuesday, June 9, 2009

ピアニスト

先日我が家に元プロのピアニストが来た。ピアニストはピアノ以外に何一つ学ばない人なのかと思うくらい原始的なホモホモサピエンスだった。奥さんが旅に出たので、娘さん二人を連れてやってきた。通常ならば、こういう原始的なホモホモサピエンスを忌み嫌う夫が、「晩餐を一緒に楽しむことにした。」と断言するので、夫唱婦随を気取り、晩餐に及んだ。まずは、鳥を丸ごと焼いたので切って取り分けてくれるかと頼んでみた。すると、「僕は刃物を持たない主義だ。」という。指に万が一のことがあってはいけないということらしい。晩餐が進むと、「貴方は、若いころ何を学んだのか?」と、問いかけてくる。ワインを口に運ぶ手を宙に浮かせ、キッとにらみをきかせる母を見てあせる子供らは、"Mother, you are still very young, of course."と、なだめてくれた。冷や汗をかくピアニストは、お皿に盛られたディナーを野獣のようにむさぼり、陳謝する。娘さん二人も野獣のように食べる。きく所によれば、お母さんが旅に出て以来、まともな食事を食べる機会がなく、父が何も作らないので10歳にもならない娘がご飯を作るらしい。世を嘆き、ワインを懇願する母に、わが子たちは慈悲深くワインを注いでくれた。おかげで翌日はひどい二日酔いだった。

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