Saturday, September 15, 2012

偶然

数日前に、ある方から「スミレのように踏まれて香る」という本を送っていただいた。著者は1927年生まれの渡辺和子という人で、現在85歳でノートルダム清心学園理事長をしている女性である。この本は元は1970年の書かれたエッセイで、今年40年以上たって新たに文庫化されたのだそうだ。平日は目を通す時間がなく土曜になったら読もう、と思っていたので、土曜日の今日、お昼過ぎからこの本をペラペラとめくり始めたところ、つけっぱなしにしていたテレビから丁度彼女のインタビュー番組が始まった。インタビューによれば、彼女は子供の時に226事件で自分の目の前で父親が殺される一部始終を見ていたらしい。その後、母親の反対を押し切って敵国の宗教であるキリスト教の洗礼を受け、それ以降キリスト者として教育者として働き続けていることを知った。驚いたことは彼女が85歳という年齢とは思えないほど、話を論理的に展開させ、語彙が豊富で、使う言葉が美しく、抑制的でありながら説得力があり、一時間にもわたりよどみなく話をされ、一瞬も退屈することなく真剣に聞き入った。今日の彼女があるのは、訓練の賜物だと思った。彼女の人生もまた戦争に翻弄され、病気も経験し、山あり谷ありである。しかしながら、この年にして、こんなにも知的で凛とした人格を持ち合わせているのは、どう考えても偶然でなく、日々の訓練の賜物に違いないと思った。彼女の本を幸運にも送って下さった方がいて、偶然にも彼女の姿を見ることができ、もちろんこの偶然を大切に活かすことが重要なのはわかっているが、これがまた実行に移すのが難かしいのである。偶然をチャンスに変えるのも訓練だとはわかっているのだが。

2 comments:

  1. LazyElephantです。
    すごい偶然ですね!幼少の頃のショックで精神がダメになってしまう人も多いでしょうに、この方はそれを乗り越え、そして沢山のことを乗り越えていきてらっしゃるのでしょうね。そういう姿を見る・知ると勇気が湧いてきます。私も読んでみたくなりました!

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  2. 素晴らしい人ですね。素晴らしさには、ある年齢になると訓練が必須だと、最近思います。

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