また漫画ネタだが、「神の雫」という日本の漫画を借りて読んでいる。こちらは「毎日かあさん」と違って、いたってシリアスなワインの漫画。そんじょそこらのワイン解説書などより、よっぽど内容が濃い。二十巻以上あるらしい。筋は、ワイン利きの主人公が、とある凄いワインを飲んでは、其のワインから生まれるイマジネーションの世界に読者を案内してくれるのだ。
小生は十何年も前にソムリエの資格を取るべく、青山にできて間もないワイン学校に通ったことがある。多くの生徒はスチュワーデスで、教室はワインの香りよりも、化粧品というか、女の匂いでぷんぷんしていた。
其の中で、一人、酒屋さんが混じっていたことがあった。三河屋の前掛けが似合いそうな、純朴な若おじさん。ピンクに華やぐ教室で肩身狭そうにしていた。其の日の先生は、これまたピンクのシャネルスーツがお似合いのお嬢先生。鈴の転がるような声で、「○×さん、このワインを表現してください」と三河屋さんを名指しした。三河屋さんは緊張しながら「えぇ、そうですね。あの、なんというか、白い花から集めた蜜のような香りで、で、えっと、色は若草色かかった黄金色で、あ、あ、朝露のようなフレッシュな味わいかと・・・」と照れを隠しながら頑張った。するとお嬢先生はやっぱりお嬢様、遠慮とか、気持ちを推し量ることができない。「まぁ、やだ、○×さん、全然違う、きゃっきゃっきゃ」と笑う。それ以降、学校で三河屋さんの姿を見かけたことはなかった。
小生は、というと、「石油のような味がします(飲んだことはない)」、「グレープ味のバブルガムの香りがします」等、ズレズレの発言ばかりし、教室では白い目で見られていた。フランス語の長ったらしい名前も覚えきれず、「蝶々みたいなアペラシオンはどこだっけ?(正解はSt Estephe村。
「てふてふ」に聞こえたから)」とソムリエ試験会場で聞いたときは、友人の目が「こいつには勝った」と言っているのを感じた。
それがまぐれ合格し、その恩に報いることもなく安酒ばかり飲んでたのを、「神の雫」以来、真面目に堪能しようとすること一週間。今更ワインの楽しさに開眼。田舎では摘み立ての木苺の香りをかいで、初めてワインとの共通点に気づく。森の中を歩いて、ワインを口に含んだときに鼻腔を通る湿った匂いを思い出す。美味しいワインは開けてから二日目位すると香りが開いて、味もバランス良くなって美味しいことが多い、など、今更実感することだらけ。
そんな休暇も今日で終わり。今朝は大きなカップいっぱいのコーヒーで頭痛薬を飲んで始まった。
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